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秋刀魚の味_小津安二郎監督作品

★★★☆☆

老いと孤独が作品のテーマという。「秋刀魚の味」との関係は観客への問い掛けだ。

平山(笠智衆)「子どもは男がいい。娘はつまらん。(嫁に出したら)他人にやってしまうだけで育てた甲斐がない。」

婚礼の日、祝宴からの帰りの友人宅で、平山は本心では娘の幸せを願いながらもポン友二人に感想を言う。寂しさを紛らす強がり言葉だ。

自宅では、更にバーにも寄り道していた平山の遅い帰宅を長男夫婦と次男が待っていた。帰宅した平山を見て安心した長男夫婦は早々に引き上げる。次男は酔っ払ってる平山に「早く寝なよ、風邪引くよ、明日は俺がご飯炊くよ。」と言って、先に布団にもぐる。

平山は居間で一人軍艦マーチを口ずさんでいたが、水でも飲もうと思ったか、一人台所に入った。その背中はいつもの背筋が伸びたものではなく小さくなっていた。<終幕>

*******************************

この映画のタイトルが「秋刀魚の味」というのは何故だろう?観る前から気になり、観終わってもその意味が分からなかった。

昭和37年の作品という。当時の一般教養なるものが自分に欠けているせいだろうかと思う。

佐藤春雄の「秋刀魚の歌」にそのタイトルの意味を理解するヒントがあるかもしれないと思ったので、以下に紹介しておく。

参考URL

秋刀魚の歌 http://uraaozora.jpn.org/posato3.html

あはれ
秋風よ
情(こころ)あらば伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食(くら)ひて
思ひにふける と。

さんま、さんま
そが上に青き蜜柑の酸(す)をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児は
小さき箸をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸(はら)をくれむと言ふにあらずや。

あはれ
秋風よ
汝(なれ)こそは見つらめ
世のつねならぬかの団欒(まどゐ)を。
いかに
秋風よ
いとせめて
証(あかし)せよ かの一ときの団欒(まどゐ)ゆめに非ずと。

あはれ
秋風よ
情あらば伝へてよ、
夫を失はざりし妻と
父を失はざりし幼児とに伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。

さんま、さんま、
さんま苦いか塩(しよ)つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。

「我が一九二二年」(大正12)所収

語釈
【女】【人に捨てられんとする人妻】 谷崎潤一郎夫人、千代子を指す。作者は大正6年頃から谷崎と交遊があったが、潤一郎の心が千代子から離れていくのを見て夫人に同情し、やがてそれが恋にかわる。
【妻にそむかれたる男】 作者自身を指す。作者は大正9年に米谷香代子と離婚している。
【愛うすき父を持ちし女の児】 谷崎夫妻の子を指す。
【世のつねならぬかの団欒】 世間普通ではないあの親しいつどい。「人に捨てられんとする人妻」と「妻にそむかれたる男」と「愛うすき父を持ちし女の児」の団欒を指す。
【夫を失はざりし妻と/父を失はざりし幼児】 千代子がその後、夫に捨てられなかったことを指す。

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この映画での台詞の言い回しは何となく不思議な調子を持っている。話し言葉というよりは棒読みっぽくもあるし、掛け合いの間の取り方も不自然に感じるときがある。しかし、これが一つの味わいにもなる。

笠智衆氏は熊本出身と聞いているが、アクセントに独特の懐かしさを感じる。自分の父方や母方の祖父達がちょうどそんな風な雰囲気で話していたように思う。

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このところ一人暮らしの父に電話するといつも同じことを言う。以前はもっと違う話題もしていたのだが。

父「毎日お母さんに会いに行くのが楽しみたい。(僕も)もう憐れなもんたい。」

兄夫婦は随分前に、母が熊本市内の病院に転院した辺りだっただろうか、父のために一室を用意し、好きなTVも設置して同居するよう申し入れたのだが、父は一人暮らしを続けている。

高齢での一人暮らしは精神的、肉体的にきつかろうと、また遠方の病院の母に車を運転して会いに行くのも危なかろうと心配するのだが、それでも当人は実家を離れようとしない。親戚との交流機会や他人様とのご縁や付き合い(かってはグランドゴルフ、今は葬儀関係が多い)を失うのが不安なのだろうと思う。

男二人、女一人の子を育てたが、最後は一人暮らしでは、さぞや子どもを育てた甲斐が無いと思っていることだろう。

ちょうど映画の平山と同じように、「若い者は若いものの生活があるから」と兄夫婦と別居していたために、3人の内孫との触れ合いも少なかったのではと漏らしたことがある。

子どもとしては親不孝を感じずには居れないのだが、一方で父の元気と強さには敬服している。平山とは違うと。

しかし、自分はどうだろうか?ちょうど娘が映画の中の平山の娘路子(岩下志麻)と同じ年頃だ。娘を嫁に出しても家内と二人であれば孤独ではない。しかし、その先はどうか?

老いと孤独。人生の五計の後段について真剣に考え始める季節になったか....

【参考】松竹ホームビデオ 

http://www.shochiku-home-enta.com/shop/item_detail?category_id=0&item_id=152944

秋刀魚の味(1962)

■商品説明
老いと孤独という深刻なテーマを喜劇的に描いた遺作

【受賞】
毎日映画コンクール:撮影賞/女優助演賞(岸田今日子)/男優助演賞(東野英治郎)
ブルーリボン賞:助演女優賞(岸田今日子)

ストーリー
平山は妻に先立たれ、家事一切を娘の路子に頼っていた。同窓会に出席した彼は、酩酊した恩師を送っていく。そこで会ったのは、やもめの父の世話に追われ、婚期を逃がした恩師の娘。平山は路子の縁談を真剣に考えるようになる。

スタッフ
監督:小津安二郎
製作:山内静夫
脚本:野田高梧・小津安二郎
撮影:厚田雄春
美術:浜田辰雄
音楽:斉藤高順

キャスト
岩下志麻/笠智衆/佐田啓二/岡田茉莉子/三上真一郎/吉田輝雄/牧紀子/中村伸郎/三宅邦子/東野英治郎/杉村春子/加東大介/岸田今日子

【尺数】112分
【公開日・劇場等】1962年11月18日公開
【製作年度】1962年
【製作国】日本
【ジャンル】ドラマ
【音声】ドルビーモノラル
【画面サイズ】スタンダード
【カラー/モノクロ】カラー

©1962松竹株式会社

Yahoo映画 http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id140622/

ユーザーレビューから:「意味の分からない題名「秋刀魚の味」は、秋に出たから?
うまい酒と肴の味?
とか思っていたら、どうも秋刀魚のおいしい脂身と苦いハラワタを人生に喩えているようですね。

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