鬼平犯科帳シリーズⅡ_本門寺暮雪&女賊
松竹ホームビデオ鑑賞。シリーズⅡ、第9話&第10話。
第9話 本門寺暮雪
井関録之助 夏八木勲、名幡の利兵衛 草薙幸二郎、凄い奴 菅田俊、白縫の伝八 多々良純
凄い奴というのが凄い。とにかくその殺気というより妖気の漂う剣に、あの乞食剣客録之助が最初の闘いで背中に大きな傷を受けたことに始まり、その後二度、三度と立ち会うも一方的に攻められ守勢となっては窮地に追い込まれる。
関西の大盗賊である名幡の利兵衛がまた曲者である。自分の所在や行動が簡単には他人に知られない筈ということから、極く限られた情報の点を結びつけて自分の周りに起こる事実からその背後にある動きを推察し、見事に言い当てる。利兵衛が江戸に来ている筈だと白縫の伝八に紹介を迫った五郎蔵の前に現れ、五郎蔵を平蔵の密偵と見抜く辺りはぞくっとする。
そんな利兵衛は平蔵が凄い奴の後を尾ける事をむしろ好都合だと語る。凄い奴であれば近づいてくる平蔵をしとめることができると言い切るのだ。平蔵の運命は.....
録之助は今回全くいいところがない。そればかりかかって利兵衛に殺しを頼まれ一旦引き受けたことまで平蔵に白状する。さすがに殺しは実行しなかったとのことだったが、殺人を実行していたら旧友の平蔵としても録之助を処罰しないわけには行かなかっただろう。
しかし、そんな録之助の過去と今回偶然にも利兵衛を見かけて尾行するという働きから、平蔵は大盗賊に対抗する機会を得たのである。
平蔵の危機を救うのは、凄い奴の妖気・殺気を怖れぬ「ある奴」の勇気であった。
このある奴の登場、それにより凄い奴との戦いを制した平蔵と、それから、「利兵衛らもこれからは放って置いてもただの年寄りに転落するだけだろう。」と語る平蔵、本編ドラマではここいらのストーリー展開が少々荒っぽいという感じが否めない。もう少し時間を掛けてでもじっくり仕上るともっと面白くなったと思うとやや残念である。
それから凄い奴の姓名が無いのも、何となく惜しい気がする。凄い奴の身の上を語るだけでも興味ある番外編の一編ができそうである。
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第10話 女賊
瀬音の小兵衛 花柳徳衛、猿塚のお千代 沢たまき、幸太郎 黒田隆哉、福住の千蔵 石浜祐次郎、おすみ 野平ゆき
女でありながら盗賊団を束ね、永年キャリアを重ねいまだ平蔵たちに捕まらない猿塚のお千代の妖艶さが全面に出る物語である。
年齢は40を超えていると思われるが、ハイティーンの男をたぶらかして、その奉公先の家の間取り情報を聞き出すという手口、さらには、自分の手下達にもときどき肌身を許しては自分から離れられない虜にしてしまうというのがお千代という女である。
池波正太郎はいろんな女性を描写するが、この猿塚のお千代はその中でも特異な存在であると思う。女とは恐しい生き物の側面を持つといやでも思わされるが、池波先生もそのように感じられたことがあったのだろうか。「女は可愛いもので、慈しむべきものである。」というのは男の勝手な思い込みであって、この世の中には初心な男には想像もつかない様な恐大な潜在力を持った女も居るのである。
本編ではお千代が風呂を使っている場面が二度使われる。最初は初登場のときで、とても中年の女には見えないと言う効果を見せるのに十分である。(しかしそれはおそらく女優を吹き替えているだろうと思う。)二度目はラストシーンであり、風呂に入っているところを火盗改方に踏み込まれて追い詰められたお千代は風呂場で剃刀を使って自害する。
お千代を演じた沢たまきの出番はあまり多いという印象が無い。そのためかお千代の盗賊の頭としての凄みの表現がやや不足したように感じるし、最期に自害するのもあっさりし過ぎたように思った。
本編では一方、瀬音の小兵衛が父親としてお千代にたぶらかされ盗賊に利用される幸太郎の身を案じ助けようとする姿が描かれる。幸太郎は小兵衛という父が居ることを知らずに育ち、自分を天涯孤独の身と思っているところへお千代が接近する。小兵衛のかっての友人である福住の千蔵がそれを目撃したことを報せに立ち寄るところから物語は始まる。父親としての小兵衛は自分の身を危険に曝してでもお千代から幸太郎を引き離そうと一念発起して行動を起こすが、年老いてブランクもある盗賊の身では何も有効な手立てもなく壁にぶつかっていたところに、偶然にもおまさと行き会う。おまさは平蔵に相談し、ある日平蔵は小兵衛の宿を訪れ、幸太郎の目を覚まさせることを含めて俺に任せて田舎に帰れと告げるのである。
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