強すぎる柔道家としての名声は、一方で、避けては通れぬ戦いに三四郎を巻き込んでいく。
駐日アメリカ人のスパーラー(拳闘家)と檜垣源之助の弟、鉄心と源三郎である唐手家との戦いが見せ場だ。時は明治20年において、何と既に異種格闘技選手権という話である。
三四郎が、自分が負かした相手の家族等について知ったときの苦悩と、それを乗り越えて成長していくところが見事に描かれていて、第一作よりも引き込まれたかもしれない。
三四郎修道館の掟(三つあり、破ると破門すると書かれている)を、やけくそになってしまったか、大胆にも三つともほぼいっぺんに破ってしまう。それは自分の中に生じて大きくなってくる己の情動を抑え切れなかったためだろう。
エネルギーを爆発させた三四郎。そして、おしまいは桧垣兄弟の「負けた」、「負けた」に続いて、主演三四郎役の藤田進の右斜め下からのドアップによる満面の笑みがラストシーンとなる。(このアップは何か本当に迫って来るなと感じた。)
藤田の不器用にも思われる演技が三四郎のキャラクターにピッタリである。ハッピーエンドに終わるところが鑑賞後に心地よさとなって残る。(なお、修道館四天王というのが出るが、三四郎以外の三人は特に目立つシーンが無かったように思う。つまらないことだが気になったので...)
以下は、印象に残った場面の台詞を書き留めたものだ。難しい言葉もあるが、ビデオを見返したり、繰り返し読んでみると、役者さんたちの味のある演技やしゃべり方がどんどん魅力を増してくる。味わい深いものである。

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時、明治20年
和尚「しかしなあ小夜さん、あの男はその間抜けなほど正直なところが値打ちなんじゃよ。利口なやつじゃあない。だが、己をごまかしては一時だって生きていけぬ男じゃ。これは情けない話だが、近頃のハイカラ書生には稀な根性じゃ。わしはな三四郎のそこにほれているんだよ、小夜さん」
小夜(笑顔で下を向く)
三四郎「僕は、僕は戦うのが辛くなりました。」「僕は柔道のために他流と戦ってきて、それをただ武道の上の勝敗とだけ思い込んでいたんです。もちろん負かした相手やその親や子や弟子達に憎まれることは武道に志す以上はと観念していました。しかし、自分の勝利がたくさんの人たちを押しつぶしていくのを目の前に見ると、僕は柔道を捨てたくなったんです。」
正五郎「それだけか?お前が二年間の旅から得てきたものはそれだけか?」
三四郎「....」
正五郎「少しも変わらん3年前の姿だ。」「お前の苦悶は私にも良く分かる、いや、お前に負わした苦労は私の苦痛だ。」「しかし、それもお互いに大きな道に達するためだと私は信ずる。闘争とは新しい統一への道程なのだ。妥協や苟合(こうごう)の中に真の平和は無い。途上の荊棘(けいきょく)を怖れてはならん。わしは柔道をかく信じて闘争の真っ只中に飛び込ました。柔道と柔術とは名称の争いをしたのではないのだ。いわんや、矢野正五郎の功名でもなければ、一姿三四郎の勝利でもない。いや柔道の勝利でないと言っても良い。そこには日本武道の勝利があるばかりなのだ。」
和尚「ちっとも変わらんお前は」
三四郎「先生にもそう言われた。俺はだめかな。俺の気持ちはいつもフラフラしている。」
和尚「だめだな。女にも惚れ切れんような小さな肝っ玉では何もできん。」
小夜「...」(黙って仕立てた着物を三四郎の方へ押し出す)
三四郎「何です?」
和尚「小夜さんの心尽くしじゃ。お前の着物ももうそろそろ引導を渡しても良い頃じゃ。貰っておけ。」
三四郎「しかし...」
和尚(強い語気で)「もらっておけ!!」
修道館 掟
1. 許可なくして他流と試合したる者、破門す
2. 見世物興行物の類に出場したる者、破門す
3. 道場に於いて飲酒、放歌或は道場を汚したる行為ありたる者は破門す
三四郎「和尚、今夜俺は修道館を出てきた。自分でこの札(木の名札)を外して来たんだ。」
和尚「うーん、お前が修道館を破門したような言い方じゃのう。悪い癖だ。」
三四郎「先生に破門されるのが辛いから自分で外して来たんだ。」
和尚「何をしでかしたんじゃ?」
三四郎「道場の掟を破って新富座で試合をした。日本の武道は奴ら(アメリカ人)には分からない。分からないままに済ませておくか、分からせてやるか、分からないまでも分かるように道をつけてやるのが情けだと思って俺はやった。」
和尚「ほう、たったそれだけか?三四郎、お前はばかだから形の上だけで掟を破ったことばかりに気を取られておるな。」
三四郎「掟は掟だ、和尚。」
和尚「武道の意地じゃろ。お前の気持ちは柔道の掟を破っちゃおるまいが。道のための形は道のために崩れても構わんじゃろうが。どうだ三四郎、この札をもう一度掛けて来い。」
三四郎「駄目だ。」
和尚「掛けていいと悟れたら、今日でも明日でも、10年でも20年の後にでも掛けに行くがいい。」
.......
和尚「眠くなった。三四郎もう帰れ。」
三四郎「今夜は泊めてもらう。実は座る気で来たんだ。」
和尚「何、お前が座禅を?よせよせ居眠りが出るばかりじゃ。」
三四郎「眠れたらありがたい。このところろくに眠れん。」
和尚「なぜ?」
三四郎「試合の相手が見えて困る。」
和尚「試合は済んだんじゃろう?」
三四郎「いやこの次の相手のことだ。」
和尚「まだやるのかい?」
三四郎「唐手....」「稽古はもちろん、道場の掃除、廊下の拭き掃除、水汲み、薪割り、飯炊き、朝から晩まで体をこき使ってみたがそれでも眠れん。」
和尚「ふむ、よし。わしも付き合おう。座ってみろ。」
三四郎「すまんのう、和尚。その代わり明日の朝うまい飯を炊いてやる。飯炊きにも極意があるんだ。」
和尚「うるさい!!つべこべ言わずとお前に取っついている奴を睨むんじゃ。そやつの消え失せるまで。よいか、三四郎!」
三四郎「うん」
(いつのまにか大の字になって良く眠っている三四郎。目覚めて..)
三四郎「すまん、俺はやっぱり駄目だ、和尚。」
(和尚も座禅を組んだまま座って眠っているのに気づき、三四郎思わず笑う。)
三四郎「僕、実は果し合いに行くんです。だから...」
小夜「いいえ大丈夫。勝ちます。」
三四郎「しかし...」
小夜「いいえ、きっと勝ちます。」
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